L'homme du destin 〜運命の人〜 花より男子二次小説

花より男子二次小説。漫画の展開からのタラレバ話を世代を超えてつくってみました。自己満足レベルなので、あしからず。

第6章①

稜は、新プロジェクトの会議に出席していた。

 

「今回、神崎HD側の責任者になります、神崎玲人です。よろしく。」

 

 

「マジか、、、責任者だってよ。大丈夫かよ、、経験ないのに。」

 

稜の先輩達が、またコソコソと話をしていた。

 

 

それを察してか

「皆さん、ご存知の通りドラ息子なので、

お手柔らかに。」

 

皮肉たっぷりに堂々と言ってのける玲人に、

稜は思わず笑ってしまった。

 

 

会議終了後、先輩達は、バツが悪そうにそそくさと部屋を後にしていった。

 

 

稜は、1人残り会議の内容をまとめていた。

 

 

「お疲れ様でした。」

 

玲人が声を掛けた。

 

「あっ、ハイ。お疲れ様でした」

 

「君も、新人君なの?」

 

「ハイ、今年入社したばかりで。。。」

 

「じゃあ、同じだね。オレも今年から、親父に会社には入れって言われてさ。」

 

「そうですか。」

 

「お互い頑張ろうよ、よろしく」

 

「あっ、ハイ。よろしくお願いします。」

 

 

部屋を出て行く玲人に一礼する稜。

 

 

妙に親近感が、湧いていた。

 

 

 

 

 

 

 

車の中で、司は類の話を思い返していた。

 

 

そうか、あいつも結婚してたか。

 

 

 

何年か前に、偶然、道明寺グループ本社でぶつかった時、あの頃には、もう1人で子供を育てていたのか??

 

 

、、、そうか、元気なら良かった。

 

 

 

十数年前、NYに経つ決意をして、別れを決めた時、オレの中の、あいつへの気持ちは、心の奥底に沈めて葬ることにした。

 

何度も、何度も、手に入れたかった、叶えたかった。。

そんな、想いを引きずったまま生きていくのは、つくし同様、司にも辛すぎる事だった。

 

日本に帰ってくるたび、気付くと窓の外の風景に、あいつの姿を探す自分がいた。

 

総二郎達から、あいつ自ら距離を置くようになった事を聞いた時、新しい世界に向かって歩こうとする牧野の決意を感じた。

 

 

もう、アイツのことは邪魔しちゃいけない。

 

 

別々の道を行く事を決めた以上、オレも歩き出さなければ、、、。

 

 

「牧野、、、」

 

葬ったはずの想いが溢れ出し、司は泣いていた。

 

 

 

 

道明寺を、いつものバーに呼び出していた類。

 

 

 

「何だよ、類。急に呼び出して。」

 

 

 

「あぁ、悪かったね。

でも、司には伝えておかないと、と思って。」

 

 

 

「は?なんだよ。笑」

 

 

 

 

「オレさ、今日、牧野に会ったよ。」

 

 

 

 

「、、、はっ?それが、何だよ」

 

 

 

 

 

「司はさ、牧野の事、どう思ってる?」

 

司の表情が、変わった。

 

 

 

 

「おまえ、ふざけんなよ!今更そんな話しかよっ。

もう、十何年前の話しだろ?  

とっくに終わった事だ、、、。」

 

 

 

 

「司、、、もう時効だから言うね。

オレ、牧野と司が離れる事になった頃、いや、もう少し前から、牧野の事が、好きだった。」

 

 

類の突然の告白に、黙ったままの司。

 

 

 

 

「司が、NYに行くことになって、2人が別れることを決めた時、牧野の事、司から奪い取ってやりたかった。」

 

 

 

 

「、、、そうだったのか。悪かったな、類。おまえだったら、オレよか、あいつの事、守ってやれただろうな。。」

 

 

悲しい顔をしたまま、俯いたままの司。

 

 

 

 

 

「あいつ、元気かよ?」

 

 

 

 

 

「あぁ、元気だったよ。

詳しくは、わからないけど、、、

結婚した相手が、事故で亡くなって、1人で子供を育てたみたい。。」

 

 

 

 

 

「、、、あいつも、苦労がつきねぇな。。。そうか、結婚したのか。。。」

 

 

 

 

 

「うん。。。立派に子供を育ててるよ。

何年経っても、牧野は牧野だった、、、。

それって、スゴイよね。」

 

 

 

 

 

 

「あぁ。」

 

 

司は、小さく答えた。

花沢類が帰った後、ぽつんと1人考え事をしているつくし。

 

 

「花沢類が、私の事を好きだった?。。。」

 

 

いつからだったんだろう。。。

あの頃は、もうアイツの事で頭がいっぱいになっていた。

自分の想いに、嘘がつけなかった。

でも、その想いを貫くことが許されなかった。

 

気持ちに、正直に生きたかった。。。

 

 

本当に、辛かった数年間のことは、

今もあまり覚えてはいない。

 

 

花沢類の気持ちにも、気づくことも答えることも出来なかった。。。

 

つくしは、一人で泣いていた。

 

「神崎HDのご子息が、今回の件からチームに入りますので、皆さんよろしくお願いします。」

 

新プロジェクトに参加することになった稑達は、部長から告げられた。

 

「えっ、神崎の息子?確か、大学出たばっかりだろ?」

 

「まあ、コネ入社で、手始めにうちと、って感じですかね?」

先輩達が、噂をしていた。

 

「そういや、どっかの令嬢と婚約してるって言ってたな〜。」

 

「そうそう!まだ、相手10代らしいぞ。

羨ましいが、ま、可哀想だよなぁ〜。

自分の好きな人生選べねぇもん。」

 

「だな。」

 

 

ふと、梓の事が頭をよぎった。

 

アイツもお嬢様だったな。。

 

梓も、好きな人生を、自分で選べないんだろうか。。。

 

リビングに案内された類。

 

 

「今、お茶を用意するね。」

 

 

 

「お構いなく」

 

 

 

 

 「あのっ、その。今日は、どんな用件ですか、、、?」

 

 

 

「うん。」

 

出されたお茶を一口飲み、類が話し始めた。

 

 

「稑クンの事なんだけど、、、

牧野は、もう知ってるよね?」

 

 

 

「、、、はい。」

 

 

 

「うちの会社で、働いてもらってる。」

 

 

 

「、、、はい。」

 

 

 

「牧野は、大丈夫かな?と思って。」

 

 

 

「大丈夫って?」

 

 

 

 

「うん。昔の事、掘り返す訳じゃないけど、色々あったからさ、、、。」

 

 

 

 

「そうね。でも、、、私達、大人になった。」

 

 

 

「そうだね。」

 

 

 

 

「花沢類や、滋さん達には、音信不通みたくなっちゃって、申し訳なかったと思ってます、散々迷惑かけたのに。。。

でも、あの頃は、もう何もかもが辛かったの、、。

だから、リセットするつもりで、

自分の生きてる世界の中で、精一杯生きてきたの、、、、」

 

 

 

「うん、、」

 

 

 

「家族ができて、守りたい、守らなきゃいけない存在ができたの。」

 

 

 

「うん、、」

 

 

 

 

「今は、精一杯、親子2人で生きてるの、、」

 

 

 

 

「うん。牧野、頑張ったんだね。」

 

 

 

 

「花沢類の会社で、お世話になる事は、とってもありがたいです、何よりも安心です。

ありがとう。

でも、、、それだけにさせて下さい。

 

 

寂しいけど、もう関わらないって決めたから。

勝手な事言ってるのは、わかってます。

 ゴメンなさい。」

 

 

深々と、類に頭を下げた。

 

 

 

 

「いや、オレも牧野の気持ちは、わかってたつもりだったんだ、、

稑クンの事は、偶然だけど、何でかな、やっぱり牧野の事、ほっとけなかった。。

連絡取れない間も、また苦労してるんじゃないかと、気が気じゃなかった、、、」

 

そんな類を優しく眼差しで見つけるつくし。

 

 

 

「花沢類、ありがとう。」

 

 

 

 

「こんな事、言っていいのかわかんないけど、昔話だと思って、聞いて欲しい、、、。

牧野の事、オレが幸せにしてやりたかった、、。

アイツから、奪ってでも。

オレ、、、あの頃、牧野の事が好きだった」

 

 

つくしは、涙を流していた。

 

「梓ちゃん、君は恋愛をしたことがある?」

 

「えっ??」

 

「僕は、恋愛は、信じてないんだ。お互いに駆け引きしたり、責めたり、嘘ついたり、辛いことばかりでしょ?時間ばかり、費やして。」

 

「だから、君との事は、運命だと思ってる。君のその目を見たときに、これだ!僕の探していたものは、これなんだ、と確信したんだよ。」

 

少し間が空いて、梓が答えた。

 

 

「私も、恋愛って、正直どういうものか、まだわかってないと思います。でも、自分以上に誰かの事を大切に思ったりする気持ちって、羨ましいとなって。。。」 

 

「フフッ」

 

「なっ、何がおかしいんですかっ!!」

 

 

「いや、ゴメン。そういう理想論で、君との関係を築くつもりは、無いんだよ。惚れた腫れたで済む恋愛は、とっくの昔に終わってるんだよ、、、、」

 

 

何かを思い出したものを、かき消すかのように玲人は言った。

 

 

「君は、僕にとって、ずっと美しい姫(プリンセス)でいてくれればいいんだよ。」