②
「司様、梓様の件で、お耳に入れたいことがございます。」
秘書が、司に耳打ちをした。
妻が病死してから、暫くは家にいる事を第一にしていたが、梓が中学生になると、司の仕事がさらに忙しくなり、2人きりの時間はほとんど無くなっていた。
「ん?なんだ?」
「会長が、勧められているお見合いの件なのですが。」
「あぁ。オレは、本人達に任せるつもりだ。
いまどき見合いなんて。。。」
自分の過去を思い出していた、、、。
騙し合いのような見合い。
そんなもの、上手くいくはずがない。
歳は取っても、あのババアは、変わらないな、と呆れていた。
「先方が、是非、お会いしたいとの事です。」
「、、、そうか、梓にも、確認してくれ。」
「はい、、、」
「ん?どうかしたか?」
「はい、この件もありまして、梓様の交遊関係を調べるようにと、会長から命を受けまして、、、。
実は、大変申し上げにくいのですが、最近、梓様が頻繁に会ってらっしゃる方がいるようなんです。」
「、、、そうか。」
「報告書がございますが、ご覧になりますか??」
「、、、いや、オレはいい。」
「承知しました。」
昔の自分を見ているようだった。
守りたかった想い。。。
とっくに、心の奥底に封印したはずなのに、
月日はこんなにも過ぎているのに。。。
あの時の気持ちが、鮮やかに戻ってくるようだった。