⑪
連絡先を交換してから、1週間。
待ち合わせの日、稑はゼミのレポートに追われていた。
「佐伯クン、私、ちょっとわかんないとこあるんだけど、あとで、教えてくれない?」
少し甘えた声で、稑に話しかける芙夏。
「え?松風のほうが、できるだろ??」
「え〜、そんなことないってぇ〜。」
「わりぃ。オレ、今日この後用事あるんだ。」
「え〜!!少しぐらい付き合ってよぉ〜。いつも手伝ってあげてるじゃないっ!」
「、、、じゃあ、30分だけ。近くのカフェでもいいか?」
「カフェ?いいよぉ。」
思い通りになったことに喜ぶ芙夏。
カフェで、隣通しに座った2人。
芙夏が、稑の方にどんどん寄ってきて、
稑の腕に、芙夏の胸が当たった。
「。。。オイっ!その、、あんま近くなよ。。」
妙に意識してしまった稑が、慌てた様子で怒り出した。
「え〜?何怒ってんの〜ぉ??フフ笑」
芙夏は、そんな事気にしてないように笑った。
その時、稑のスマホが光った。
「あっ、ヤバ!もう時間だ」
それを聞いた芙夏は、悔しそうな顔をした。
次の瞬間
「バシャッ」
何かが溢れる音がし
「キャー!」
芙夏の叫び声が響いた。
何が起こったのか、わからない稑。
「や〜ん、佐伯クンのコーヒーが溢れて、掛かっちゃった〜泣」
見ると、芙夏の胸から下辺りがコーヒーでビショビショになっていた。
「あっーー!!ゴメンっ!!!」
慌てて、ハンカチを取り出し、コーヒーを拭こうとした。
あー、マジでコーヒーに縁ないなと、落ち込む。
「佐伯クン、私このままじゃ帰れない。。。」
泣き出す芙夏に、稑はあたふたし始めた。
「ゴメンっ!!着てたもの弁償するから、許してっ!!」
「え〜、ホント?嬉しい。じゃあ、着替えたいからお買い物付き合ってくれない?」
「えっ?今から??」
スマホの画面をチェックする稑。
「え〜、だって〜泣」
「わっわかった、わかったよ。」
芙夏をなだめながら、待ち合わせの時間を気にしていた。