⑨
車の中で、司は類の話を思い返していた。
そうか、あいつも結婚してたか。
何年か前に、偶然、道明寺グループ本社でぶつかった時、あの頃には、もう1人で子供を育てていたのか??
、、、そうか、元気なら良かった。
十数年前、NYに経つ決意をして、別れを決めた時、オレの中の、あいつへの気持ちは、心の奥底に沈めて葬ることにした。
何度も、何度も、手に入れたかった、叶えたかった。。
そんな、想いを引きずったまま生きていくのは、つくし同様、司にも辛すぎる事だった。
日本に帰ってくるたび、気付くと窓の外の風景に、あいつの姿を探す自分がいた。
総二郎達から、あいつ自ら距離を置くようになった事を聞いた時、新しい世界に向かって歩こうとする牧野の決意を感じた。
もう、アイツのことは邪魔しちゃいけない。
別々の道を行く事を決めた以上、オレも歩き出さなければ、、、。
「牧野、、、」
葬ったはずの想いが溢れ出し、司は泣いていた。