⑪出会い
バイトの休憩時間に、本社ビルの屋上で
本を読むのが、稑の習慣だった。
屋上といっても、特に何もなく、
社員は、下の専用サロンで休憩するので
誰もこないのが、お気に入りだった。
風が心地良くなってきたな、と感じ、そろそろ
バイトに戻ろうとした瞬間、
普段、自身以外に、開けることのないだろう
入り口のドアが、勢いよく、バンッ!と開き、1人の女性が駆け込んできた。
何もない屋上には、似合わない、大きく背中の空いたドレスに、10センチ以上であろう、ハイヒールを、慣れない感じで履いてた。
そこにいる稑に全く気付いてない様子で、
突然、ワンワンと、大声で泣き始めた。
掛ける言葉が見つからない陸は、暫くその場に立ち尽くしていた。
「どうしてっっ??どうしてっ!?
私じゃダメ??子供だから??親友の娘だから???」
顔は、涙とメイクが混ざってドロドロになっていた。
ヒック、ヒックと泣き続ける背中を見つめながら、バツが悪そうに、稑が話しかけた。
「。。。あの〜、その。。。大丈夫ですか??
あっ、別に聞くつもりは無かったんですが、聞こえてきて。。。」
その声で、ようやく自分以外にも人がいることに気付いた様子で、一瞬ハッとしていたが、
ハッキリとした口調で答えてきた。
「ちょっと!!アナタ誰??気軽に話しかけないでよねっ!!」
さっきまで、泣きじゃくっていたのが嘘のように、鋭い目でこちらを睨んだ。
なんなんだよっ!!コイツ。
しかも、こんな格好で。
心配して、話しかけたオレが、バカみたいじゃんかよ。
心の中で、 稑は叫んだ。
その場から、立ち去ろうとする稑に、
「待ちなさいよっ!!今、見た事、聞いた事
絶対誰にも言わないって誓える??」
はぁ??何なんだよ!この女!!
一体、何様なんだよ。
怒れる気持ちを押し殺し、
「ハイハイ、今見た事、聞ーたこと、誰にも
言いませんよ!お嬢さまっ!!」
皮肉交じりに、返した。
「そう!約束よっ!!この道明寺梓を裏切ったら、タダじゃおかないからっ!」
だから、何様なんだよっ!!
道明寺梓サマだぁ!?ふざけんなっ!
稑は、収まりきれない気持ちを、入り口のドアにぶつけ、仕事に戻った。