L'homme du destin 〜運命の人〜 花より男子二次小説

花より男子二次小説。漫画の展開からのタラレバ話を世代を超えてつくってみました。自己満足レベルなので、あしからず。

黒塗りの高級車が、佐伯設計事務所の前に止まった。

 

家の、チャイムを鳴らす。

 

「ピンポーン」

 

「はい、はーい。ちょっと待っててくださいっ!」

 

インターホンの向こう側で、ドタバタしている様子がわかった、相変わらずだと、くすりと笑った。

 

「ゴメンなさいっ、お待たせしま、、、」

 

ドアを開けたまま、止まっていた。

 

 

「久しぶりだね、牧野」 

 

笑顔で語りかける。

 

 

「はっ、花沢るっ、、花沢類なのっ??」

 

 

目を丸くして、こちらを見ていた。

 

「えっ!?ど、どうして、ここに、、??」

 

 

「とりあえず、中で話さない?」

家の中を指して、にこりと笑う。

 

 

「どっ、どどどうぞ。」

 

まだ動揺しているつくしをして、

笑っていた類だった。

 

 

 

 

その頃、梓は、神崎と婚約していた。

 

まだ、高校生の梓だったが、

祖母の楓から、条件を出され、仕方なく応じていた。

 

楓は、梓の、交遊関係を調べ上げ、類との事、稑の事も把握済みだった。

 

梓には、

 

「婚約に応じれば、この先、これ以上束縛をしない事。

もし、応じなければ、類との事を司に話すと言う事と、(すでに、司には類から話した事を知らない)

稑の母親の会社に、道明寺グループ関連の仕事を一切まわさない。」 

 

というものだった。

 

この話は、楓と梓だけで、司は一切把握していなかった。

 

最初は、抵抗していた梓だったが、

以前、滋に言われた言葉を思い出し、

仕方なく、婚約を受けたのだった。

 

 

一方、相手の神崎は、梓に夢中になっていた、優しく紳士な振る舞いで接せられるうちに、梓も少しずつ神崎に心を開いていった。

 

第5章①

1年後。

 

稑は、バイト時代の縁もあり、花沢物産に就職していた。

 

梓とは、あの後、連絡が取れなくなり、疎遠になっていた。

彼女の事情もあるのだろうと、稑は気にしないようにしていた。

 

梓の事もあったが、

実は、就職にするにあたり、母から初めて反対されていた。

 

普通に考えれば、倍率も高い商社に、半ばコネ入社で入れたのだ。

普通の親だったら、喜ぶはずなのに、、、。

 

なぜダメなのか?反対なのか?の理由は、ハッキリ答えず、ただ、商社なんて、あなたに向いてない。の一点張りだった。

 

安定した職について、今まで苦労してきた母親を楽にさせてあげようと思っていたのに、、、

 

就職が決まった時も、1番に喜んでくれるはずなのに、 

 

「そう、、、よかったわね。」  

 

と心無く、答えただけだった。

 

 

 

 

 

稑は、この間の梓が言っていた言葉を、思い出していた。

 

人並み以上に、恵まれた環境で生まれたのに、

幸せを感じられない人もいるんだ。。。

 

物やお金だけでは、幸せや自由を叶えられないこともある、、、

逆にその存在が、自分をその環境から縛り付けている要因になっている人もいる、、、

 

梓が、そうなんだろうか、、、

 

少しかわいそうに思えた。

 

 

自分は、父親がいないが、

 

その分、母親や周りの人に沢山の愛情をもらって育った。

 

母親も、若い頃は、父親の仕事が上手くいかず、ずっと貧しい生活だったそうだが、家族や友達にも恵まれで明るく、楽しく、幸せな日々だったと、聞いた。

 

 

きっと、あいつはそういう事を知らずに育ったんだろう。。。

 

世の中には、お金で買えなくても、大切なものが沢山あるんだと、

お金だけが、幸せじゃないと、

 

 あいつにも、わかる日が来るのだろうか?

 

本当の幸せを、教えてやれるヤツが現れるだろうか、と考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、梓は、楓からの食事の誘いを受け、

ホテルにいた。

 

 

「お祖母様、ごきげんよう。」

 

 

 

「梓、よく来たわね。」

 

相変わらずの存在感で、孫の梓さえも圧倒する。

 

 

 

「お祖母様と、お食事なんて、久しぶりなので、楽しみです。」

 

 

 

「そうね。」

 

 

 

梓が笑顔で笑いかけたのに対し、素っ気ない雰囲気の楓。

 

 

 

席に通されると、すでに先客が待っていた。

 

 

 

 

「あら、まぁ、お待たせしてしまって、すみません。神崎さん。」

 

 

 

「いえいえ、こちらこそ。急な事で、無理を言って申し訳ない。」

 

 

 

 

その様子を見ていた梓は、訳がわからない。

 

 

 

「あぁ、そちらが、梓さんだね。」

 

 

「梓、こちらにいらっしゃい。」

 

 楓の秘書に促され、楓の横に並ぶ。

 

 

 

 

「梓。こちらは、神崎HDの会長と、そのご子息の神崎玲人さん。神崎さん、この子が、孫の道明寺梓ですのよ。」

 

 

 

何がなんだかわからない梓は、ボー然としていた。

 

 

 

「梓!まぁ、失礼しました。まだ、子供なもので。さぁ、玲人さんも、お掛けになって。」

 

 

未だ状況がわからない梓をよそに、お見合いは進められて言った。

 

 

「今日は、例の場所ムリそうだな。。。」

 

 

「そうだね、大遅刻したし笑」

 

 

「だから、ゴメンって!」

 

 

話してながら、並んで歩く、稑と梓。

 

他愛のない話しをしていた。

 

 

 

「ねぇ、稑君って、兄弟いるの?」

 

 

「ううん。オレは、一人っ子」

 

 

「えーっ、私も。

じゃあ、家族3人暮らしだ。」

 

 

「いや、、、父親が小さい時に亡くなってるから、母と2人暮らし」

 

 

「そうなの??実は、私も小さい時にママが亡くなって、、、今はパパと2人なんだ。」

 

 

「そうか。。。」

 

 

「何か同じ境遇だね。」  

 

 

ニコッと笑った梓の顔が、少し引きつっているのを感じた。

 

 

 

「、、、何か、悩みでもある?」

 

 

 

「う、ううん。ただ、よく私のいる環境って特別だって言われるんだ。。。でも、それが、まだよくわかんないの。」

 

 

 

「ふーん。オレから見たら、英徳に通うお嬢様って時点で、だいぶ特別だけど?」

 

 

 

「ある人に言われたんだ、、、この先、私は、他の人よりも、多くの良い事、悪い事の選択を迫られることになるって。」

 

 

 

「自分だけの為の人生じゃない、って事、言いたいのかな、その人は、、、?」

 

稑が、ぼそりと言った。

 

 

 

 

「司様、梓様の件で、お耳に入れたいことがございます。」

 

秘書が、司に耳打ちをした。

 

妻が病死してから、暫くは家にいる事を第一にしていたが、梓が中学生になると、司の仕事がさらに忙しくなり、2人きりの時間はほとんど無くなっていた。

 

 

「ん?なんだ?」

 

 

「会長が、勧められているお見合いの件なのですが。」

 

「あぁ。オレは、本人達に任せるつもりだ。

いまどき見合いなんて。。。」

 

 

自分の過去を思い出していた、、、。

 騙し合いのような見合い。

 そんなもの、上手くいくはずがない。

 

 

歳は取っても、あのババアは、変わらないな、と呆れていた。

 

 

 

「先方が、是非、お会いしたいとの事です。」

 

 

 

「、、、そうか、梓にも、確認してくれ。」

 

 

 

「はい、、、」

 

 

 

「ん?どうかしたか?」

 

 

 

「はい、この件もありまして、梓様の交遊関係を調べるようにと、会長から命を受けまして、、、。

実は、大変申し上げにくいのですが、最近、梓様が頻繁に会ってらっしゃる方がいるようなんです。」

 

 

「、、、そうか。」  

 

 

 

「報告書がございますが、ご覧になりますか??」

  

 

 

 

 

「、、、いや、オレはいい。」

 

 

 

「承知しました。」

 

 

 

昔の自分を見ているようだった。

 

 

 

守りたかった想い。。。

 

 

とっくに、心の奥底に封印したはずなのに、

月日はこんなにも過ぎているのに。。。

 

あの時の気持ちが、鮮やかに戻ってくるようだった。